STEP.1 はじめる前に│一般社団法人 武蔵野青色申告会

STEP.1 はじめる前に

■はじめに

個人事業主の青色申告には様々な特典があります。その中でも、お金を出さずして最高65万円を事業の儲けから差し引くことができる(不動産所得は一定規模が必要です)青色申告特別控除は、青色申告の醍醐味ともいえます。

しかし、その恩恵にあずかるためには、それなりの努力をしなければなりません。具体的には、複式簿記による帳簿を作成し、損益計算書・貸借対照表(青色申告決算書の全ページ)を確定申告書に添付し、そして申告期限内に確定申告書を提出しなければならないのです。

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とはいえ、われわれ個人事業主は、商売をするのが本文であり、帳簿を付けるために簿記の勉強をするというような余裕がありません。結果、現状としてせっかく青色申告をしているのにもかかわらず、売上や諸経費を集計表にまとめて1年間の所得(儲け)を計算するのが精いっぱいで、そのため青色申告特別控除も10 万円どまりとなっています。
そこで、弥生会計(やよいの青色申告)
の出番です。弥生会計は、簿記の知識に自信がなくてもこづかい帳感覚で帳簿を付けることができる、個人事業主や中小法人に人気の会計ソフトです。

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しかし、弥生会計が「やさしい・かんたん」とはいえ、やはり苦手意識のある帳簿で、しかもパソコンソフトです。弥生会計を使ってみたいけどパソコンが苦手、という方が多くいらっしゃるのもまた事実であり、最初の部分でつまずいてしまうとそのままやる気をなくしてしまいます。

このコンテンツでは、弥生会計を使うにあたり、初心者がぶつかりがちな問題に焦点をあて、弥生会計の導入・入力をスムーズに始められるよう解説していきます。このコンテンツが、弥生会計の導入のひと押しとなり、青色申告の特典を活用できる一助となることを願っております。

なお、操作画面での説明は弥生会計10プロフェッショナルを使用していますので、スタンダード・やよいの青色申告では画面の表示が異なる部分があります。
また、コンテンツの内容は執筆時点でのバージョン(弥生会計10)・税制に基づいておりますので、記載の内容は将来にわたって保証されるものでないことをご了承願います。

■弥生会計って何なの?

さて、第1回では、青色申告の特典である最大65万円の青色申告特別控除には「複式簿記による帳簿」という高いハードルがあることを説明しました。そして、簿記の知識に自信がなかったとしても、弥生会計を使うことで、楽にそのハードルを越えることができるともいいました。

しかし、ここまでの説明では、弥生会計は青色申告特別控除でトクするために利用するものと思われてしまったかもしれません。

いいえ、違うのです。

楽に帳簿づけができて青色申告特別控除が65万円になるというのは、弥生会計を使うメリットのひとつにしか過ぎません。では、弥生会計って何なのでしょうか。

私は、弥生会計の最大のメリットは、税金のための帳簿づけから経営のための帳簿づけにレベルアップできることだと思います。今現在、手書きで集計表や帳簿を作成されている方は実感できるはずです。あなたが書きあげたその数字、どのように使いますか?

・請求書や領収証、通帳などを整理して、項目ごとに集計しました。
・売上から仕入や諸経費を差し引いて、年間の利益(所得)を計算しました。
・所得から社会保険料などの各種所得控除を差し引き、所得税を計算しました。

もし、帳簿をつけた結果が、年間の利益の最終値を出すためだけであったなら、それは税金の計算をするために帳簿をつけたことになり、とてももったいないことです。われわれ個人事業主が、商売の合間をぬって、時間を割いてつけた帳簿なのに。

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弥生会計で帳簿づけを行うことは、日常の取引のすべてを数字としてデータベース化するということです。ちなみに、取引というのは、売上・仕入・諸経費などの儲けに関することだけでなく、預金間のお金の振替や借入金の返済などのお金の動きも含んだすべてのことをいいます。
つまり、あなたの事業に関する数字を、弥生会計というデータベースから様々な方法で取り出すことができるのです。

・去年の今頃はどんな状況だっただろうか・・・前期と比較して経営状況を把握
・自分の業種は3月と11月が忙しい・・・月別の推移で季節変動を数字で把握
・先月の売上代金は全部もらっただろうか・・・相手先別の未入金残高を確認
・翌々月あたり、お金がヤバそうだ・・・資金繰りシミュレータで残高予想

などなど。せっかく時間を割いてつける帳簿ですから、あなたの経営に役立てるようにしたいですよね。弥生会計は、過去の記録をつける帳簿ではなく、そこから未来を考えるための道具なのです。

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次回からは導入編ということで、弥生会計のデータを作ったときにやるべき設定や、大切な事業所データのバックアップ方法などにふれていきます。

次のステップ >> データファイルの作成